妙子は平素からそれが嬉しかったところへ持って来て、その井谷が今朝わざわざ暇乞いに来、特に「こいさんに会いたい」と云い、是非東京へも一緒に来るようにとまで云ってくれたと聞いては、ひとしお感激の念を禁じ得ないものがあった。
妙子としては、兎角雪子の縁談が持ち上る度に、何となく自分が邪魔者にされ、日蔭者扱いされる傾きがあるのに、井谷がそんな風に云ってくれたのは、何も蒔岡家はこの妹の存在を不名誉がるには当らない、それより妙子の特色を認めてやって、こう云う妹がありますと云って堂々と世間へ押し出すがよいではないか、と云うことを、暗に諷してくれているようにも思えて、その心づくしに対しても、今度の東京行きに参加しなければ済まなく感じられたのであった。
「そんならこいさんも行って来なさい。