井谷へ贈る記念品は、東京の送別会迄に極めればよいことになったので、今夜は取敢えず花束にでもしようかと貞之助が云い出して、そんな買物をするために、食事を済ますと五人は早めに神戸へ出た。
そして、元町で花を買ったが、それを井谷にプラットフォームで渡す役は悦子が勤めた。
停車場では、本来ならば相当多数の見送人が賑わってよい筈であるのを、わざと時間を秘したので、割合に淋しい出立であったが、それでも彼女の二人の弟、―――大阪で開業している村上医学博士の夫妻と、国分商店の店員である房次郎夫妻を始め、二三十人はいたであろうか。