縁談のことも頭に置いていなくはなかったが、それは努めて二次的に考え、まあ会って見た工合、―――と云う風な、微温的な態度以上になれなかったのは、又しても身を入れ過ぎて後で落胆することを恐れる気持が、どうしても除かれなかったからであった。
従ってまだ、雪子に当って見るところ迄は運んでいなかった訳であるが、さしあたり、他の諸条件が皆好望であったとして、この縁談の難点は、先日もちょっとその話が出たように、縁づく先が東京であると云うことで、これは当人が逡巡するであろうことはほぼ間違いがないのであった。
いや、もっと正直のことを云うなら、今更雪子にそんな我が儘を云わせては置けないし、又云えもしない筈だけれども、寧ろそう云う幸子自身が、何となくこの妹を東京へはやりたくない、出来れば京阪神の間に住まわせてやりたい、と云う密かな願望を抱いているのであった。