従ってまだ、雪子に当って見るところ迄は運んでいなかった訳であるが、さしあたり、他の諸条件が皆好望であったとして、この縁談の難点は、先日もちょっとその話が出たように、縁づく先が東京であると云うことで、これは当人が逡巡するであろうことはほぼ間違いがないのであった。
いや、もっと正直のことを云うなら、今更雪子にそんな我が儘を云わせては置けないし、又云えもしない筈だけれども、寧ろそう云う幸子自身が、何となくこの妹を東京へはやりたくない、出来れば京阪神の間に住まわせてやりたい、と云う密かな願望を抱いているのであった。
で、御牧さんは将来何処でお住まいになるのでしょうか、京都のお父様が家を買ってお上げになるとか承りましたが、何処へお買いになるのでしょうか、決してそれを条件にすると申すのではございませんが、東京でなければいけないのか、就職口さえあれば関西でも差支えないのか、そう云うことも参考迄に伺って置きたいのですが、と云うと、宜しゅうございます、そのことはつい伺っておりませんけれども、早速お尋ねして見ましょう、と、井谷は云ってから、しかし恐らく東京だろうと存じますけれども、東京ではお厭でしょうか、と聞き返すので、いいえ、別段、………と、幸子は慌てて、そう云う訳ではございませんが、………と、そこのところは言葉を濁した。