彼女たちの滞京最後の日、第三日目の朝から午後へかけての間は、例に依って頗る忙しい半日であった。
幸子の最初の予定では、今日は一日観劇のために空けて置こう、そして明日の午前中に道玄坂を訪い、午後に土産物などを買って夜行で立とうと云うつもりであったが、夜汽車は来る時に懲り懲りした、睡眠不足が溜っているから、早く帰って自分の寝室で足腰を伸ばさして欲しい、と、先ず妙子が云い出したのに、雪子も賛成した。
彼女たちの本当の腹は、疲れていることもあるであろうが、それよりも、本家を訪問する時間を出来るだけ短く切り詰めたい、―――つまり、明日の朝の「つばめ」で立つことにして、今日午前中に買物を済まし、午後歌舞伎座へ行く前の僅かな時間に、自動車を門前に待たせて置いて五六分間立ち寄るくらいな程度にしたい、と云うことにあるらしかったが、妹たちのその気持は幸子にも理解出来ないではなかった。