彼女たちの本当の腹は、疲れていることもあるであろうが、それよりも、本家を訪問する時間を出来るだけ短く切り詰めたい、―――つまり、明日の朝の「つばめ」で立つことにして、今日午前中に買物を済まし、午後歌舞伎座へ行く前の僅かな時間に、自動車を門前に待たせて置いて五六分間立ち寄るくらいな程度にしたい、と云うことにあるらしかったが、妹たちのその気持は幸子にも理解出来ないではなかった。
妙子が本家を嫌うのは云う迄もないとして、雪子にしても、既に一年以上も本家に戻っていないのであったが、実を云えば去年の十月、本家が妙子に、東京へ来るか、でなければ蒔岡家と絶縁するか、二つに一つを選べと云って来た時に、雪子に対してもほぼ同様のことを云って来ていたのであった。
ただ雪子には退っ引きならぬようには云わず、ぼんやり申し越したに過ぎなかったので、何処まで本気で云っているのか分らない、と云う風に雪子は取り、全くそれを無視する行動に出たのであったが、本家の方でもそれきり雪子の身柄については処置を促して来るではなかった。