妙子が本家を嫌うのは云う迄もないとして、雪子にしても、既に一年以上も本家に戻っていないのであったが、実を云えば去年の十月、本家が妙子に、東京へ来るか、でなければ蒔岡家と絶縁するか、二つに一つを選べと云って来た時に、雪子に対してもほぼ同様のことを云って来ていたのであった。
ただ雪子には退っ引きならぬようには云わず、ぼんやり申し越したに過ぎなかったので、何処まで本気で云っているのか分らない、と云う風に雪子は取り、全くそれを無視する行動に出たのであったが、本家の方でもそれきり雪子の身柄については処置を促して来るではなかった。
それは雪子の取扱いに手を焼いている義兄が、彼女を刺戟することを避けて暫くなすがままに任しているのか、或は雪子が命令通りにしないのをよいことに、彼女をも妙子同様、暗黙のうちに義絶したつもりであるのか、孰方かであろうと思えるにつけても、今度本家へ訪ねて行けば姉から何かしらそれに関連した話が出そうなところなので、本人の雪子は勿論、幸子にしても道玄坂へは何となく足が向かないのであった。