それは雪子の取扱いに手を焼いている義兄が、彼女を刺戟することを避けて暫くなすがままに任しているのか、或は雪子が命令通りにしないのをよいことに、彼女をも妙子同様、暗黙のうちに義絶したつもりであるのか、孰方かであろうと思えるにつけても、今度本家へ訪ねて行けば姉から何かしらそれに関連した話が出そうなところなので、本人の雪子は勿論、幸子にしても道玄坂へは何となく足が向かないのであった。
ありていに云うと、幸子は先々月、富士五湖めぐりのついでに上京した時にも、姉と電話で話しただけであったのは、眼を患っていたからでもあったが、一つには、姉が義兄の意を伝えて雪子を返せと云い出しでもして、雪子が肯じなかった場合に、板挟みになるのを恐れたからであった。
のみならず、これらの事情を別にしても、幸子には又幸子として、本家の姉を疎んずる感情があった。