で、それらの理由がいろいろと積っているので、今度は全然顔出しをせず、こっそり帰って来たい気持もあったのであるが、知れた時に面倒だからと云う貞之助の意見もあるし、それに、雪子の縁談が、今度はひょっとすると、と思うと、矢張この機会に多少はそのことを本家の耳へ吹き込んで置く必要があった。
と云うのは、一昨日迄は幸子はそんなに今度の話に望みを懸けてはいなかったのであるが、一昨日の晩始めて御牧と云う人物に遇い、又昨夜の会で、この縁談の媒妁人を買って出ている国嶋夫妻等に紹介され、それらの人々の人柄や、彼等に依って醸し出される雰囲気がどんなものであるかを知るに及んで、うっかり深入りしてはと云う警戒心が急に緩んで来たのであった。
幸子の受けた印象では、昨夜の会は工まずして自然に見合いをしたことになり、その結果は双方に取り上々の首尾であったと思えた。