待つのは堪忍して貰いたいと運転手が云うのを、そう云わないで待っていてほしい、ほんの十五分か二十分の間である、待ち賃はよいだけ払うからと、拝むようにして頼み込んで車を格子先に停めて置き、二人は二階の八畳の間に上って、あの朱塗の八足台の卓や、頼春水の額や、蒔絵の棚や、その棚の上の置時計等が、相も変らず飾ってあるのを眺めながら姉と対坐したことであったが、今年六つになる梅子を除いて、上の子供たちは皆学校へ行く年頃になっているので、家の中は昔のように騒がしくはなかった。
「まあ、それにしたかて、一遍自動車帰って貰うたらどうやねん」
「帰りの車、この辺で直き掴まるやろうか」