そして今、歌舞伎の狂言のことを聞かれて見ると、たまたま四人の姉妹が東京に落ち合いながら、ひとりこの姉を除け者にして芝居に誘わなかったことが、何だか意地悪をしたようで、済まなく感ぜられて来るのであった。
姉はそれをどう云う風に取っているか、おおどかな彼女の性質として、別に何とも感じていなければよいけれども、いくつになっても娘心を失わない人のことであるから、芝居と聞けば一緒に行きたいところであろう。
それに近頃は、本家が虎の子のようにしていた動産の大部分が、株の値下りで殆ど無価値に等しくなったと云うことなので、家計はますます苦しくなっているに違いなく、たまにこう云う折ででもなければ、芝居見物に行くことなどもないのではあるまいか。