それに、二三年前までは何処の医者でも訳なく手術を引請けてくれたものだけれども、近頃は追い追いそう云うことをやかましく云う社会状勢になって来たので、今日ではたとい妙子が納得しても、そう簡単に実行出来ることではない。
とすると、外に考えられる方法は、何処か人目に付かない所へ当分の間身を隠させ、その地で分娩させること、―――その期間中は絶対に男との交通を禁止し、一切此方の費用と監督の下に置くこと、そうして置いて一方では今度の雪子の縁談を急速に進行させ、結婚式まで運んでしまうこと。
―――しかし幸子は、これを実行するのには夫に事情を打ち明けて、彼の力を借りるのでなければ、自分一人の計らいで出来ることではないと思うと、早くも気が重くなって来るのであった。