三好は、こんなことを云うと卑怯のように聞えますけれども、と言訳しながら、僕も意志が弱かったのが悪いですが、しかし決して自分の方から積極的に出たのではありません、前後の事情、まことに已むを得ない羽目になってつい間違いを仕出来したのですから、それだけはどうか御推察になって下さい、こいさんに聞いて下されば僕の云うのが譃でないことがお分りになります、と云っていたが、多分それが事実であろう。
何にしても、そう云う訳なので、彼は此方の申出を承諾したばかりでなく、僕の心持も諒解して、感激していたようであった。
そして、僕はこいさんを妻に持つような資格のある人間でないことは、自分でも承知していますが、しかし将来結婚をお許し下さるなら、誓ってこいさんを幸福にして上げるつもりです、実は内々責任を感じておりましたので、お許しが得られた場合のことも考えて、僅かながら貯金もしております、僕はそうなりましたら、たとい小さくとも一軒独立した店を構えて、あまり品の悪くない西洋人向のバアでも経営しようと思っておりますが、こいさんもゆくゆく洋裁の方で身を立てて、夫婦共稼ぎをしようと云っておられますので、経済上のことについてもお宅の御迷惑になるようなことはいたしません、などとも云っていた。