で、漸くその宿にいることを突き止めて会うことが出来たが、この方も、そうスラスラとは行かなかったけれども、大体予想したような解決を見た。
貞之助は、妙子のような不品行な妹を持ったのは全くわれわれの不面目であって、君が彼女に係り合われたのは災難と申すより外はなく、御同情に堪えないけれども、………と云う風に持って行ったのであったが、奥畑は、最初はひどく分りのよいような顔をして貞之助を安心させ、それでこいさんは何処におられるのですか、とか、お春どんでも附添っているのですか、とか、何気ないような口調で云いながら、頻りに妙子の居所を嗅ぎ出そうとする様子であったので、いや、どうかそれは聞かないで下さい、妙子が目下何処にいるかは三好にも隠してあるのです、と云うと、そうですか、と云って考え込んでいた。
貞之助が、君はもう妙子が何処で何をしていようと、自分には関係のないことだと云う風に思って貰えないでしょうか、と云うと、それから機嫌が悪くなって、孰方にしても僕は諦めますけれども、お宅ではこいさんとあんな人間との結婚をお許しになるのでしょうか、あの男は今の店に勤める前に外国汽船のバアテンダアをしていたとか云っていますけれども、全然経歴が明瞭でない男です、板倉はあれでも出所が分っていましたが、三好にはどんな親兄弟があるか聞いたことがありません、何しろ船乗りなんかしていたんですから、どう云う過去を持っているか知れたものではありません、などと云ったが、御忠告は有難う、その点は私達もよく考えます、と、貞之助はあまり逆らわないようにして、ついては、この上虫のよいお願いはしにくいのであるが、成る程妙子は憎むべきであっても、彼女の姉たちには何の罪もないのであるから、何卒彼女たちのため、蒔岡家のためを考えて下すって、妙子の妊娠した件は内聞に願えないであろうか、万一このことが世間に知れると、一番迷惑を蒙むるのはまだ売れ口の極まらない雪子であるから、と云い、その点は如何でしょうか、他言しないと云う約束をして下さるでしょうか、と云うと、そんな御念には及びません、僕はこいさんを憎む気持なんか露程もないんですから、まして姉妹の方々を困らせようなんて思ってもいません、と、いくらか不承々々にではあったが、そうはっきりと云った。