初めのうちはこの老人に遠慮する気味合いであった一座の空気も、酒が廻るに従って解れて来、父の隣に席を占めた御牧が、如何でございますか皆さん、この親子はちっとも似ていないと云う評判があるんですが、………と、冗談交りに親父の顔と自分の顔の棚おろしを始めた頃から、彼方此方に笑声が起った。
貞之助は立って老人の前に行って献酬をし、それから国嶋の前に行って、御高話拝聴と云う恰好で長いこと坐っていた。
悦子を除く女たちが皆和服でいる中に、ひとり洋装をして、靴下の脚を寒そうに曲げて坐っていた光代は、流石に今日は慎しんでいるようであったが、光ちゃん、いやに大人しいねと、御牧に盛んに杯をさされて、今日はそんなにいじめないでよ、と云いつつもだんだん酔って行って、いつもの早口を発揮し出した。