明くる日ミヤコホテルの国嶋から電話で、昨夜はまことに好結果に行き、双方満足の御様子であったのは欣快に堪えない、と云い、自分は今夜御牧氏と同道帰京するが、結納その他のことについては、追って井谷嬢を以て連絡申上げるであろう、なお昨夜の広親子の話では、阪神の甲子園に園村氏所有の恰好な家作があり、売ってもよいと云うことであるから、それを子爵家が買い取って新夫婦に贈ることになろう、御牧氏は近々大阪か神戸に職を求めることになろうし、彼処なら蘆屋も近いことであるから、万事に都合がよいであろう、ただ、目下その家は借家人が住んでいるので、至急に出て貰うように交渉するとのことであった、と云って来た。
貞之助はそれにつけても、渋谷の義兄から未だに返事が来ないのが気に懸ったが、本家の態度が妙にはっきりしないのは、雪子の件で義兄が矢張面白くなく思っていることもあり、外にも理由があるかも知れないと察せられたので、或る日此方から辰雄に宛てて次のような趣旨の書面を出して見た。
―――今回の縁談については姉上から詳細お聴き取りのことであろうが、小生も決してこれを最上のものと申すのではない。