それで先日電話でお断りして置いた通り、去る八日御牧家の招きに応じて広親子との顔合せを済ませ、近々結納と云うところまで運んだのであるが、本家を差措き、小生等夫婦の計らいを以て話を進めてしまったことについて、或は気持を悪くしておられるのではないかと思う。
それにつき、今更遅蒔ではあるが、小生としてお詑びしなければならないのは、昨年以来、いや、実はそのずっと前から、雪子ちゃんを本家へ返すようにと云う度々のお言葉があったにも拘らず、遂にそれを実行し得ずして今日に至ったことである。
これにはいろいろな事情があって、小生は決してそのお言葉をないがしろにした訳ではなく、いつもそのことを不本意に思っていたのであるが、ありていに云えば雪子ちゃんが、東京へ行くことを甚しく厭い、幸子も幾分それに同情する気味があったので、余程強硬な手段に訴えるにあらざれば、実行することが出来なかったのであった。