でも、毎年の行事だけはと云うので、思い切り地味な作りをして、十三日の日曜に日帰りで京都へ行き、瓢亭などは抜きにして平安神宮から嵯峨方面を申訳に一巡したが、今年も亦妙子がいず、四人が大沢の池のほとりの花の下でつつましやかに弁当を開き、塗盃に冷めたい酒をしめやかに飲み廻しただけで、何を見たやら分らない気持で帰って来た。
貞之助たちがこのお花見に行った明くる日に、かねてからお腹の大きかった鈴がお産をした。
この牝猫はもう十二三歳になる老猫なので、去年妊娠した時にも自分の力で生むことが出来ず、注射で陣痛を促進してようよう生んだのであったが、今年も前の晩から産気づきながら容易に分娩しないので、階下の六畳の押入に産所を作って、獣医を呼んで注射して貰い、辛うじて口元まで出かかった胎児を、幸子と雪子とで代る代る引っ張り出した。