お春は妙子の退院と同時に蘆屋へ戻ったのであったが、これも内々尼崎の親たちの方に見合いの話があるらしく、雪子娘さんのお輿入が済みましたら、二三日お暇を下さいますように、と云っているのであった。
幸子は、そんな工合に急に此処へ来て人々の運命が定まり、もう近々にこの家の中が淋しくなることを考えると、娘を嫁にやる母の心もこうではないかと云う気がして、ややもすると感慨に沈みがちであったが、雪子はひとしお、貞之助夫婦に連れられて廿六日の夜行で上京することに極まってからは、その日その日の過ぎて行くのが悲しまれた。
それにどうしたことなのか数日前から腹工合が悪く、毎日五六回も下痢するので、ワカマツやアルシリン錠を飲んで見たが、余り利きめが現れず、下痢が止まらないうちに廿六日が来てしまった。