幸子はその晩夫からそのことを聞いた時に、こいさんには何も云わんと置きなさいと云われたので、もう妙子には話さなかったが、こうして今この青年に向い合って見ると、気のせいか、顔つきや物の云い方にも何処となく真率を欠いたところがあって、「どうも近頃のあの男には好意が持てない」と云う夫の言葉に同感したくなるのであった。
「―――雪子ちゃんですか、―――はあはあ、―――いろいろなお方が心配してくれはりまして、絶えず話はありますねんけど」
幸子は奥畑が、しきりに雪子の縁談の模様を聞きたがるのは、自分の方も早くしてくれと云う間接の催促なのであろう、どうせそれが目的で来たのに違いないので、今にそのことを云い出すのであろうが、そうしたら何と答えようか、この前の時も単に「聞いて置く」と云う態度で終始したつもりで、何も言質を取られている覚えはないが、今度は夫の考が前と変って来ているとすれば、尚更注意して物を云わなければならない、私達は二人の結婚の邪魔をする気はないけれども、最早や二人の恋の理解者であるとか同情者であるとか云う風に思われたくはないのであるから、そう云う思い違いをされないだけの挨拶をする必要があろう、と、内々そんな心づもりをしていると、奥畑は急にちょっと居ずまいを改めて、口付の煙草の灰を拇でトントンと灰皿に弾き落しながら、