幸子は実際、妙子に質してみないことには、彼女がどう云う考でそんなことを云っているのか諒解に苦しむ点が多いのであったが、それは兎に角、この青年が妙子の将来の夫たることを既に公然と認められているような口の利き方をするのに、軽い反感と滑稽とを覚えながら聞いていた。
奥畑のつもりでは、自分がこのことをお願いに上ったと云えば、大いに幸子から同情もされ、打ち明けた相談もして貰えるものと思い込み、巧く行けば貞之助にも紹介して貰えるものと期待して、わざと今頃の時間を狙って来たのであるらしく、「お願いの件」を話してしまっても、なかなか簡単には引き取ろうとしないで、あれかこれかと此方の心持に探りを入れて来るのであったが、幸子はなるべく要点を外して応対をし、いろいろ妹のことについて御注意を戴いて有難いと云った風に、此方からは努めて他人行儀な口を利いた。
と、夫が帰って来たらしく、表に靴の音がしたので、彼女は慌てて飛んで行って、