尤もこのことは、本家の兄や姉たちも雪子一人をさえ持て余しているくらいで、さしあたり妙子を呼び寄せる意志はないらしいと云うことを、いつぞや雪子も云っていたのであるが、今日となっては、たとい本家が呼び寄せようとしても、恐らく妙子はそれに応じないであろうと思えた。
彼女は義兄が東京へ移住して以来一層締まり屋になったと云う噂を聞くにつけても、自分は多少の貯えも出来ており、人形の方で収入もあることだから、もっと月々の仕送りを減らして貰ってもよいと思っている、本家も六人の子供達が追い追い成長するし、雪姉ちゃんのことも見て上げなければならないし、なかなか経費が懸るであろうから、何とかして兄さんや姉ちゃんの負担を軽くして上げたいと思っているので、そのうちには全然仕送りを断ってもやって行けるようになるであろう、ただ、兄さんや姉ちゃんに是非聴き入れて貰いたいのは、来年あたり仏蘭西へ修業に行くことを許可してくれることと、お父さんから預かっている筈の私の結婚の支度金の一部、もしくは全部を、その洋行費として出してくれることである、自分は兄さんが自分のために預かっているものが何程あるかよく知らないが、半年か一年間の巴里滞在費と往復の船賃ぐらいには事を欠かないであろうから、何卒是非それを出して貰いたい、自分は万一洋行のためにその全額を費してしまって、結婚の支度に一文も残らないようになっても文句は云わない、で、以上に述べた自分の考や計画を、今直ぐでなくとも、適当な時に中姉ちゃんから本家へ伝えて諒解を得て貰いたい、自分もそのことを頼むためになら、一度東京まで話しに行ってもよい。
そう云って彼女は、奥畑が洋行の費用を出して上げると云っていることなどは、てんで問題にもしなかった。