悦子はいつも洋服を着ているこの若い叔母が、用意のために十日ほど前から日本髪に結って和服を着出したのを知ってはいたものの、さすがに今日の変り方には呆気に取られたように眼を見張った。
妙子が着ている衣裳と云うのは、実は本家の姉の鶴子が昔婚礼の時に用いた三枚襲ねの一番下の一と襲ねなのである。
妙子は、今日のはお浚いと云っても小人数の集りであるし、それでなくてもそう云うことは差控えるべき時局下であるから、新しく衣類を調える迄もないと考えて、幸子と相談した結果、本家の姉のこの衣裳がまだ上本町の蔵に置いてあることを思い出して、それを借りることにしたのであったが、父が全盛時代に染めさせたこの一と揃いは、三人の画家に下絵を画かせた日本三景の三枚襲ねで、一番上は黒地に厳嶋、二枚目は紅地に松嶋、三枚目は白地に天の橋立が描いてあるのであった。