よし、そんなら僕行って来る、と、彼は幸子に云ったが、幸子が何と答えたかは覚えていない。
ただ玄関を出ようとする時、一杯涙を溜めた眼をじーッと此方に注ぎながら一瞬間しっかりと抱き着いたのを覚えているだけである。
彼は和服を一番悪い洋服に着換えて護謨の長靴を穿き、レインコートに防水帽を被って出かけたが、半丁ほど行って振り返ると、後からお春が尾いて来るのに心づいた。
よし、そんなら僕行って来る、と、彼は幸子に云ったが、幸子が何と答えたかは覚えていない。
ただ玄関を出ようとする時、一杯涙を溜めた眼をじーッと此方に注ぎながら一瞬間しっかりと抱き着いたのを覚えているだけである。
彼は和服を一番悪い洋服に着換えて護謨の長靴を穿き、レインコートに防水帽を被って出かけたが、半丁ほど行って振り返ると、後からお春が尾いて来るのに心づいた。