彼は和服を一番悪い洋服に着換えて護謨の長靴を穿き、レインコートに防水帽を被って出かけたが、半丁ほど行って振り返ると、後からお春が尾いて来るのに心づいた。
彼女は先刻アッパッパのようなワンピースを泥だらけにして濡れ鼠で帰って来たのであるが、今度は浴衣に襷を掛け、臀端折をして紅い腰巻を出していた。
何や、お前は附いて来んかてええ、帰んなさいと怒鳴ると、はい、其処まで行かして戴きますと云いながら追って来て、旦那さん、其方へいらしったらあきません、此方の方がよろしゅうございますと、東へ行かずに、南へ真っ直ぐに下って行くので、貞之助もそれに従って国道まで出た。