シュトルツ氏の三人の子供たちのうち、フリッツはまだ幼いので学校へ行っていなかったが、ペータアとローゼマリーとは神戸の山手にある独逸人倶楽部附属の独逸小学校へ通っていた。
父親のシュトルツ氏の通勤先も神戸なので、以前にはよく親子三人で出かける姿を見たものであるが、支那事変が始まってからは商売の方が暇になったと云うことで、父親は出たり出ないだりしていたので、最近では子供二人だけが毎朝揃って出て行くようになっていた。
で、今朝も父親は家にいたのであるが、子供達の身の上が案じられるので、何とかして神戸まで行って見ると云って、さっき出かけたところである、勿論その時は出水と云っても程度が分らず、電車が不通であることも知らずに出かけたのであるが、途中で間違いでもなければよいがと、夫人はそれを心配し出しているのであった。