森を出て田辺へかかると、水は却って線路の北側だけになり、南側は平日の通りであったが、本山駅へ近づくに従って次第に南側にも水を認めるに至った。
でもまだ線路の上は安全で、貞之助は歩いて行くのに格別の危険も困難も感じなかったけれども、時々甲南高等学校の生徒が二三人ずつかたまって来るのに行き遇い、呼び止めて様子を聞くと、この辺は何でもありません、本山駅から先が本当に大変なのです、もう少し歩いていらっしゃれば向うが全部海のようになっているのが見えますと、誰も同じような答をする。
野寄の、甲南女学校の西の方へ行きたいのですがと云うと、さあ、あの辺は恐らく一番ひどいのではないでしょうか、僕等が学校を出て来る時分にもまだ増水していましたから、今頃は線路の上も、西の方は埋没してしまったかも知れません、などと云う。