彼が腰かけている席から山手の方を望むと、ちょうど本山第二小学校の建物の水に漬かっているのが真北に見え、一階南側に列んでいる窓が恰も巨大な閘門のように夥しい濁流を奔出させているのであったが、あの小学校が彼処に見えるとすると、今この列車の停っている位置は甲南女学校を東北に距ること僅々半丁程の地点であることは明かであり、従って、此処から目的の洋裁学院へは、平日ならば数分を出でずして到達出来る訳であった。
が、そうこうするうちに車内の生徒たちもだんだん前のような元気がなくなり、誰も申し合せたように真剣な顔つきになり始めた。
と云うのは、実際事態が笑いごとでなくなりつつあることが、血気盛な若者達の眼にも否み難くなって来たからであった。