幸子は夫が無謀な行動をするような性質でないことを信じてもいたし、出かける時に冒険はしないと云っていた言葉もあるしするので、夫については格別心配もしていなかったのであるが、時刻が移るにつれて、妙子ばかりでなく夫のことも気遣われて来た。
野寄がそんなにひどいとすれば行ける訳はないのであるから、途中で引き返して来そうなものだのに、未だに帰って来ないのはどうしたのであろう。
もう少し、………もう少し、………と思いながら、知らず識らず危険区域へ足を蹈み入れて、水に取り巻かれてしまった、と云うようなことはないであろうか。