彼と妙子とのいきさつは幸子を除く家族の者には秘密にしてあると云うことは、彼も知っている筈であるのに、あの取り済ました、おっとりした奥畑が、焦慮の余り平生の嗜みも忘れて、そんなことを取次の女中に聞いたと云うことも、今日に限って幸子には許せるように思えるし、彼がそれほど度を失っていることに、寧ろ好感が持てさえした。
「兎に角上って戴きなさい」
彼女はそれをよいしおに、垣根のところからまだ首を出していたシュトルツ夫人に、
彼と妙子とのいきさつは幸子を除く家族の者には秘密にしてあると云うことは、彼も知っている筈であるのに、あの取り済ました、おっとりした奥畑が、焦慮の余り平生の嗜みも忘れて、そんなことを取次の女中に聞いたと云うことも、今日に限って幸子には許せるように思えるし、彼がそれほど度を失っていることに、寧ろ好感が持てさえした。
「兎に角上って戴きなさい」
彼女はそれをよいしおに、垣根のところからまだ首を出していたシュトルツ夫人に、