お春が這入って来て、御飯の支度が出来ておりますがと、顔色を見い見い恐る恐る尋ねたので、晩飯の時刻が疾うに過ぎていることに心付いたが、とても食卓に向う気はなく、あたしはよいから、悦子だけ先に食べさせて上げてと、云ったけれども、二階へ聞きに行ったお春は直ぐ降りて来て、お嬢ちゃんも後になさるそうでございますと云う。
いつも独りで二階にいることを淋しがる悦子が、もう勉強も済んだ時分だのに珍しく部屋に引き籠ったきり大人しくしているのが不思議であるが、こう云う時にうるさく母に附き纏うと剣突を食うことがあるのを承知して、近寄らないようにしているのであろう。
幸子は二三十分もそうしていたものの、又落ち着かなくなって来たらしく、何を思ったか二階へ上って行ったが、悦子には声をかけないで、そっと妙子の部屋へ這入って燭台を点した。