板倉はこれらを撮影する時、大騒ぎをして光線の効果などにひどく苦心を払っていたが、感心なことには、余程熱心に舞を見ていたものらしく、姿態の注文を出すのにも、「こいさん、『凍る衾に』云うとこがおましたな」とか、「『枕にひびくあられの音』云うとこの恰好して下さい」とか、文句や振りを覚えていて、自分でその形をして見せたりした。
そんな工合で、この写真は板倉の傑作と云ってもよい出来栄えなのであったが、幸子は今見ると、あの日妙子の何の気なしに云ったことや、したこと、―――ちょっとした動作や眼づかいや言葉づかいなど迄が、妙にはっきりと憶い出せて来るのであった。
妙子はあの日公開の席で始めて「雪」を舞ったのであるが、そのわりにはなかなか上手に舞った。