その朝、悦子を学校へ送って行ったお春が帰宅してから程なく、八時四十五分頃に妙子は家を出て、いつものように国道の津知の停留所からバスに乗った。
まだその時刻には、非常な豪雨であったけれどもバスは運転していたので、彼女は平常通り甲南女学校前で下り、そこからほんの一と跨ぎの所にある洋裁学院の門をくぐったのは、九時頃であった。
が、学院と云っても、のんきな塾のようなものであったし、何しろそう云う悪天候のことではあり、水が出そうだなどと云って騒いでいる場合であったから、欠席者が多く、出て来た者も落ち着かない有様なので、今日はお休みにしましょうと云うことになり、みんな帰ってしまったが、彼女だけは、妙子さん、珈琲を飲んで行かない、と、玉置女史にすすめられて、別棟になっている女史の住宅の方で暫く話していた。