女史が、あら、妙子さん、その人形大丈夫か知らと、煖炉棚の上に載っている、妙子の作った仏蘭西人形を気にしたので、大丈夫でっしゃろ、まさかそんなに来えしませんやろ、などと云っていたが、実際まだその時分には三人ながらいくらか面白半分にきゃッきゃッと云っていた。
弘少年が学校の鞄が流れて行くのを掴まえようとして体を伸ばした弾みに、浮いて来たラジオの角へ頭をコツンと打つけて「あ痛ア」と云った時なんか、女史も、妙子も、頭を押さえている当人も、可笑しくて笑いこけたりした。
そして、何でも半時間ぐらいはそんな風に騒いでいたのであったが、或る瞬間から、急に三人申し合せたように真剣な顔つきになって黙り込んでしまった。