家なども内部に一杯土砂が詰まったために流失や倒潰を免れたのが多かった)部屋の外へ逃げると云う方法も考えないではなかったし、窓枠を破ることぐらいは出来たかも知れないけれども、妙子が窓の外を窺うと、(そこは上げ下げになった窓で、さっき雨が降り込むので上の方一二寸を残して締めたのであった)外部も室内と同じくらいの水位になっており、且室内の水は次第に沼のように澱んで来るのに反し、ガラス一枚外は非常な激流が流れていた。
そして、窓から四五尺離れたところに西日を防ぐための藤棚がある外には、その辺は芝生になっていて、高い樹も建物もない。
もし窓の外へ跳び出して、何とかして藤棚まで泳ぎ着くことが出来、その棚の上へ攀じ登ることが出来れば締めたものであるが、棚に達する迄の間に押し流されてしまうことは明かであった。