―――彼女は今まで狭い一室の中で踠いていたので、外部の変化は想像もし得なかったのであるが、その時始めて棚の上に立って、さっきから僅々一二時間の間に如何なる現象が起ったのかを明瞭に看取したのであった。
彼女がその時見たものは、あの貞之助が田中の小川の鉄橋を越えたあたりで、省線の線路の上から見たところの「海のような」景観と、恐らく同一のものであったろう。
ただ貞之助の場合にはその海を東の岸から展望したのであるが、妙子はその海の殆ど真ん中に立って、四方を取り巻く怒濤を見渡した訳であった。
―――彼女は今まで狭い一室の中で踠いていたので、外部の変化は想像もし得なかったのであるが、その時始めて棚の上に立って、さっきから僅々一二時間の間に如何なる現象が起ったのかを明瞭に看取したのであった。
彼女がその時見たものは、あの貞之助が田中の小川の鉄橋を越えたあたりで、省線の線路の上から見たところの「海のような」景観と、恐らく同一のものであったろう。
ただ貞之助の場合にはその海を東の岸から展望したのであるが、妙子はその海の殆ど真ん中に立って、四方を取り巻く怒濤を見渡した訳であった。