彼女は今しがた助かったと思ったばかりであるが、荒れ狂う自然の猛威を見ては、助かったのは一時のことで、結局助からないのではないか、自分も板倉も、どうしたらこの水の包囲から脱け出ることが出来るであろうか、と云う気がした。
が、さしあたり女史と弘少年のことが案じられるので、まだ先生と弘さんがいたはるねん、どないぞしたげて、―――と、しきりに急き立てている時に、どーん、と、藤棚を揺す振ったものがあった。
それは一本の丸太が流れて来て打つかったのであったが、よし、と云うと、板倉は又水の中へ降りて行って、その丸太で藤棚から向うの窓へ橋を架け始めた。