が、さしあたり女史と弘少年のことが案じられるので、まだ先生と弘さんがいたはるねん、どないぞしたげて、―――と、しきりに急き立てている時に、どーん、と、藤棚を揺す振ったものがあった。
それは一本の丸太が流れて来て打つかったのであったが、よし、と云うと、板倉は又水の中へ降りて行って、その丸太で藤棚から向うの窓へ橋を架け始めた。
丸太の一方の端を窓の中へ押し込み、此方の端を、妙子も手伝って藤棚の柱に藤蔓で縛りつけて、橋が出来上ると、彼はそれを伝わって向う側へ渡り、窓の中へ這入って行ったきり可なり長い間姿を見せなかったが、後で聞くと、窓のところでカーテンのレースを引き裂いて紐を作っていたのであった。