妙子が今朝は玉置の洋裁学院に来る日であることを知っていた筈の彼として、妙子の身に万一の危険が迫った場合には自分が真っ先に駈け付けようと云う下心を、もう家を出る時から抱いていたのではないであろうか。
―――と云う疑問も起るのであるが、今はそのことには触れずに置こう。
何にしても藤棚の上で妙子が聞いたのは、水に追われて彼方へ逃げ此方へ逃げしているうちに、偶〻こいさんが洋裁学院に来たはることを思い出したので、これは万難を排しても救助に行って上げなければならん、と心づき、遮二無二濁流の中を駈け付けた、と云うのであった。