板倉は、もう庄吉もいることだし大丈夫だからと、貞之助が云うのを押し切って、その辺までお送りしましょうと又附いて来たが、田中を出はずれたあたりで引き返して行ったのであった。
幸子は、何処かで妙子と行き違いになったらしい奥畑が、恐らく後で又問い合せに来るのではないかと心待ちにしていたが、その夜はとうとう現れないで、翌朝になって、代理として板倉を寄越した。
聞けば昨夜板倉が妙子を送って帰宅してから、やや暫くして啓坊が彼の家に訪ねて来、自分は今夕蘆屋の蒔岡の家に寄せて貰ってこいさんの帰りを待っていたのだが、余り遅いので、そこらまで迎えに行って見るつもりで国道を歩き出したら、ついこの辺まで来てしまった、出来れば野寄まで行って見たいのだけれども、もう真っ暗になって来たし、これから先は往来が川になっているので、彼処をじゃぶじゃぶ渡って行くのも大変であるから、君の所で様子を聞いたら分りはしないかと思って寄ってみた、と云うことだったので、それなら安心なさって下さい、実はこれこれしかじかですと、板倉は朝からの一部始終を語った。