しかし妙子は、何と云っても水と格闘した時に体に無理をしたと見えて、その明くる日あたりから方々の節々が痛く、殊に右の腋の下が疼いて、肋膜にでもなるのではないかと云う不安を感じたが、好い塩梅にそれも数日間で直ってしまった。
ただ、あれから二三日目にちょっとした夕立があった時、彼女はざあざあと云う雨の音を聞くと慄然とした。
雨が恐いなどと云うことは全く生れて始めての経験であったが、矢張あの時の恐怖症が心の何処かに潜在的に残っていたものらしく、その数日後、夜半に雨が降り出した時にも、又水が来るのではないかと思って、彼女は一と晩じゅう眠れなかった。