ちょうど夕凪の時刻なので風がぱったり死んでいるのが、暑いことは暑いけれども、静止している樹々の色合がひとしお鮮かで、芝生の緑が眼に沁み入るようである。
この春彼女が東京へ立って行った頃にはライラックと小手毬が満開で、さつまうつぎや八重山吹はまだ咲いていなかったが、今はもう霧島や平戸も散ってしまい、わずかに咲き残った梔子の花が一つ二つ匂っているばかり。
シュトルツ家との境界にある栴檀と青桐の葉はおびただしく繁って、その二階建ての洋館を半ば蔽い隠していた。
ちょうど夕凪の時刻なので風がぱったり死んでいるのが、暑いことは暑いけれども、静止している樹々の色合がひとしお鮮かで、芝生の緑が眼に沁み入るようである。
この春彼女が東京へ立って行った頃にはライラックと小手毬が満開で、さつまうつぎや八重山吹はまだ咲いていなかったが、今はもう霧島や平戸も散ってしまい、わずかに咲き残った梔子の花が一つ二つ匂っているばかり。
シュトルツ家との境界にある栴檀と青桐の葉はおびただしく繁って、その二階建ての洋館を半ば蔽い隠していた。