そこは廊下を挟んで風呂場と向い合っているので、着物を脱いだり洗濯物を束ねて置いたりする場所に使われていて、南側が庭に面してはいるけれども、庇が深くて薄暗い行燈部屋のような所なのであるが、日が遠いのと、西側の壁に低い掃き出し窓が開いているのとで、日中でも冷え冷えとした風が通り、家じゅうで一番涼しい部屋とされているので、三人は争ってその窓の前へ寄り集って、畳に臥そべるようにしながら最も暑い午後の二三時間を過した。
毎年の例として、彼女達は土用になると食慾が減退して「B足らん」になり、夏痩せをするのであるが、分けても平素から痩せている雪子の細り方は著しかった。
彼女は今年は六月時分から脚気が起ってなかなか直りそうもないので、一つはそのための転地療養をも兼ねて出て来た訳であったのに、此方へ来てから一層脚が重くなったので、絶えずベタキシンの注射を姉や妹にして貰っていたが、幸子や妙子も皆多少ずつその気があるので、お互に注射をし合うのが、近頃での日課になっていたと云ってもよい。