幸子は疾うから裸の背中が見えるような、後の割れたワンピースを着ていたが、七月も廿五六日頃になると、雪子の洋服嫌いまでがとうとう我を折って、観世縒で編んだ人形のような胴体にジョウゼットの服を着始めた。
妙子も、三人のうちでは誰よりも活動的な筈であるのが、あの水の日の衝撃からまだ十分に恢復しきっていないらしく、今年の夏はいつものような元気がなかった。
尤も洋裁学院も、あれからずっと休みなのであったが、夙川の松濤アパートの方は幸いに水禍を免れたので、製作の仕事を続ける分には差支えないのだけれども、ここ暫くはその方にも気分が向かない様子で、めったに仕事部屋へも出かけなかった。