幸子は、何よりも今年の五六月頃に、妙子や悦子のために遠い所を毎日出稽古に来てくれたことが障ったのではあるまいか、あれが発病の遠因を成していなければよいが、と云うことが気に懸った。
彼女はあの時分、おさく師匠が妙にむくんだ青い顔をしていたり、稽古を附けながら忙しい息づかいをしていたりするのに心づいて、自分の健康は舞で保っているのだと御当人は云っているものの、腎臓病に体を動かすことは実は禁物な筈であるから、出稽古に来て貰うことを辞退した方がよくはなかろうかと思いながら、折角意気込んでいる娘や妹を落胆させることもいとおしく、それに誰よりも師匠自身が、ひどく身を入れてくれているのに絆されて、結局そうも云い出しかねてしまったのであるが、今になれば矢張あの時止めなかったことが後悔せられた。
で、自分も近日訪ねて行くとして、取り敢えず端書が来た翌日に、妹を遣って見ることにした。