と、二人の姉の前を通って扇風機の傍にすわり、襟をはだけて胸もとへ風を入れながら、漸くおさく師匠の病状を語った。
―――お師匠さんは体の工合が悪い悪いと云いながらも、先月中は別にどうと云う程のこともなかったのであるが、日頃弟子に名取の免状を出すことを余り好まない人であったのが、七月三十日に、或るお嬢さんに名取を許すことになって、その式を自宅で挙げた。
その時お師匠さんは、暑い折柄であるにも拘らず、きちんと紋服を着けて先代の写真を祭り、その前で祖母譲りの方式に依って盃事を厳重にしたが、翌三十一日にそのお嬢さんの家へ挨拶に行った時には何となく顔色がすぐれなかった。