十四
二十七日の朝の「かもめ」で立つことにしていた幸子は、前の晩に荷纏めをしてみると、渋谷へ持って行く土産物や何やかやで鞄が大小三つ程になり、自分一人では不便なので、こう云う機会にお春にも東京見物をさせてやることを思いついた。
貞之助の身の周りの世話は、妙子が留守をしてくれるので心配はないとすると、此方はお春を連れて行く方がいろいろの点で便利である、と云うのは、事に依ったら、学校の始まる時分までにお春を附けて悦子を先に帰すことにして、自分は暫くあとに残りたい、久し振に東京へ行くのであるから、少しはゆっくりして、芝居なども見て帰りたい、―――と、幸子は内々そんな目算を立てたのであった。