彼女はさっき、悦子やペータアのことを冷やかしたけれども、実は彼女自身、列車が新橋駅を出て東京駅に至る間に、高架線の両側に聳える高層建築の景観を目睹した時は、久し振に帝都の威容と云うようなものに接した気がして、多少の興奮を覚えないでもなかった。
大阪も近頃は御堂筋などが拡張されて、中之嶋から船場方面に近代的建築が続々そそり立つようになり、朝日ビルの十階、アラスカの食堂あたりから俯瞰すると、流石に壮観であるけれども、何と云っても東京には及ばない。
幸子はこの前、復興後まだ日の浅い帝都を見たのが最後であって、それからの発展の様相を心に描いていなかったのであるが、その高架線の上からの眺めは、彼女の知っている東京とは違ったもののように見えた。