大阪も近頃は御堂筋などが拡張されて、中之嶋から船場方面に近代的建築が続々そそり立つようになり、朝日ビルの十階、アラスカの食堂あたりから俯瞰すると、流石に壮観であるけれども、何と云っても東京には及ばない。
幸子はこの前、復興後まだ日の浅い帝都を見たのが最後であって、それからの発展の様相を心に描いていなかったのであるが、その高架線の上からの眺めは、彼女の知っている東京とは違ったもののように見えた。
彼女は、列車の窓が次々に送り迎える巍然たる街衢、その街衢と街衢との切れ目毎にちらつく議事堂の尖塔を遠望すると、今更に九年の歳月と云うものの長さ、―――その間には帝都の変貌のみならず、自分や自分の身の周りにもさまざまな推移のあったことが回顧された。