銀座から日本橋界隈の街通りは、立派と云えば立派だけれども、何か空気がカサカサ乾枯らびているようで、彼女などには住みよい土地とは思えなかった。
分けても彼女は東京の場末の街の殺風景なのが嫌いであったが、今日も青山の通りを渋谷の方へ進んで行くに従い、夏の夕暮であるにも拘らず、何となく寒々としたものが感じられ、遠い遠い見知らぬ国へ来てしまったような心地がした。
彼女は前に東京のこのあたりを通ったことがあったかどうか覚えていないが、眼前に見る街の様子は、京都や大阪や神戸などとは全く違った、東京よりもまだ北の方の、北海道とか満洲とかの新開地へでも来たような気がする。